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理学部と工学部の違いって?工学部出身の元塾講師が解説します

こんにちは、@ででぽ です。

 

私は大学時代に、中高生を対象とした塾で先生をしたのですが、そのときによく聞かれた質問のひとつに

 

「理学部と工学部ってどう違うの?」

 

というものがありました。私は工学部の出身者なのですが、確かに差が分かりにくいですよね。

 

しかし、理学部と工学部の間には、実は大きな違いがあります。私は理学部の友人もいましたので、工学部との違いもよく理解しています。

 

どちらが自分にとって良い選択であるかは当然人ぞれぞれですが、安易に学部を選択すると、後で後悔することになります。

 

この記事では、主に理系の高校生を対象に、理学部と工学部の違いについて、元工学部の人間が赤裸々に書いていこうと思います。

1.理学部と目的

理学部の目的は「理系の学問を追究する」ことです。

 

今は、高校で学んでいる数学・物理・化学・生物などは、それぞれの学問の“初歩の初歩”の部分をやっています。(「こんなに難しいのに初歩の初歩なの…?」と思うかもしれませんが、学問の道とはとても奥が深いのです。)

 

理学部は、その延長をひたすら突っ走っていくことになります。理学部の人たちの勉強のモチベーションは「とにかくその科目が好きだから」とか「好奇心を満たしたいから」などです。

 

例えば数学科に入りますと、本当に一日中数学をやることになります。もちろん、1、2年生のころは「教養科目」といって色んなジャンルの授業を受けるのですが、それ以降は一つの科目につきっきりです。

 

数学が苦手な人からすると頭がおかしくなりそうな話ですが、数学科の人間は基本的に「3度の飯より数学が好き」なタイプの人種なのです。

 

もちろん、数学科の例を挙げましたが、他の学科でも同様です。大学時代、数学科・物理学科・生物学科の友人がいましたが、皆そんな感じの人でしたね。

 

2.工学部の目的

対して工学部の目的は「理系学問の知識を使って世の中の役に立つものを作る」ことです。

 

機械、電気、情報、化学、建築、土木など、工学部も様々な学科に分かれていますが、この目的はすべてに共通しています。

 

工学部にとっては、学問はあくまで“道具”というスタンスです。ここが理学部とは大きく違うところかと思います。

 

工学部の人間のモチベーションは「世の中の役に立ちたい」なのです。それを実現するために、数学や物理や化学などを勉強するのです。

 

なので、工学部の人は、理学部の人ほど学問に対して情熱を持ってなかったりします。私は機械学科だったため、授業の多くが数学と物理の延長でした。機械学科の中で、これらの学問が“嫌い”という人はさすがにいませんでしたが、「三度の飯より好き」という人はあまりいませんでしたね(ゼロではありませんが)

 

3.じゃあどっちがいいの?

と、ここまで各学部の違いを簡単にまとめてみましたが

 

「で、結局どっちにすればいいの?」

 

と思っている人がいるかもしれません。塾講師時代、このように聞いてくる学生に対して私はこう答えていました。

 

「どっちかで迷っているくらいなら、工学部にしておけ。理学部へ行くのは、行く明確な理由を持っている人だけだ。」

 

はい、完全な工学部びいきな答え方ですね。しかし、ちゃんとそう答える明確な理由があります。それを今から解説していきます

3.就職難易度

理学部vs工学部で真っ先に上がる話題が、「就職のしやすさ」です。

 

工学部は、その他すべての学部を含めた中でも、かなり就職が容易な学部です。

 

工学部の目的は「世の中に役に立つもの作ること」です。世の中の役に立つということは、“お金を生み出せる”ということですので、ビジネスの世界ではとても重宝されます。

 

今、あなたがこのブログを見ているスマホor PCは、機械、電気、情報などの知識を持った人たちが力を合わせて作ったものになります。

 

ある程度の偏差値の大学であれば、大学から企業へ推薦を出してくれることもあります。しかも推薦は、通常の就活よりも早い時期に行われます。30、40社と企業の面接を受ける人がいる中、機械学科では「1社しか受けてない」人がとっくに就活を終えていたりするのです。

 

この傾向は、機械系と電気系で特に顕著です(次いで情報系)。これらの学部は、知識に汎用性があって多くの企業が欲しがる一方、全体の人数が少ないので、「企業が学生を取り合う」ことになるのです。

 

対して、理学部では状況が大きく異なります。理学部では、学問を追究する一方、「その知識をどう役立てるか」という視点は持っていません。

 

言ってしまえば、理学部の知識は「お金にならない」のです。そのために理学部はしばしば、“就職無理学部”と揶揄されてしまうのです。

 

もちろん、理学部出身でもしっかりと就職している人はたくさんいます。私の周りでも、名だたる企業に就職した理学部出身者をたくさん知っています。

 

しかし、そのような人たちは決まって優秀な人たちでした。大学の成績がよいだけでなく、コミュニケーション能力が高いなど、何かしら企業に「欲しい!」と思わせるような長所を持った人たちでした。

 

一方、そうでない理学部の人たちが就職で苦戦していたのは事実です。どの企業にも受からなかったために、しぶしぶ教員や博士課程(研究者)に進む人もいました。

 

理学部を志望している人は、そのことをしっかりを認識しておく必要があるでしょう、

 

ただ、理学部の中でも、学科によって就職難易度は異なります。就職しやすいから順に表すと、

 

物理>化学>>>>>>>>>>>>>>>>>>>数学≧生物

 

です。マジでこうです。理学部でも結構差があります。物理や化学が比較的有利なのでは、それらの知識がベースにある人は、必要な知識は企業に入ってからでも習得できるからです。

 

ちなみにこれはあくまで“平均値”あるいは“傾向”の話です。先も述べましたが、飛び抜けて優秀な人は学部とか関係なく就職できてしまうので。

 

以上まとめると、就職のしやすさという観点なら、工学部の方が“圧倒的に”イージーモードです。これが工学部を薦める一つ目の理由です。

4.入試難易度

先ほどは、工学部の方が就職しやすいという話でした。では、入試の時の難易度はどうでしょうか?

 

一見、就職しやすい工学部の方が偏差値が高そうですが…ところがどっこい。ほとんどの大学で“工学部よりも理学部の方が偏差値は上”なのです。

 

その理由としては

 

・そもそも理学部は人数が少ない

・「3度の飯よりその科目が好き」な人が集まるので、少なくともその科目に関してはめちゃくちゃ勉強している

 

あたりかと思います。

 

そのため、同じ大学なら理学部よりも工学部の方が受かりやすいのです。あるいは、理学部から工学部へ志望変更すれば、ワンランク上の大学へ合格できるかもしれないのです。

 

これが、工学部を薦める二つ目の理由です。

5. じゃあ理学部には行くなってこと?

ここまでは工学部をひいきするような話ばかりしてきましたので、理学部の人に怒られてしまうかもしれません。

 

しかし、私は決して「理学部には行くな」と言うつもりはありません。世の中には、工学部よりも理学部の方が向いている人もいます。

 

それは、3章の頭でも話しました「理学部へ行く明確な理由がある人」です。

 

例えば、物心ついたときから宇宙が大好きで、将来は研究者になって宇宙の理論を説きあかしたい!という人なら、理学部へ行くべきでしょう。

 

工学部でも、宇宙に関われる人はいます。例えば、スペースシャトルや人工衛星を作るには、工学の知識が必要になります。そういう形で宇宙開発に貢献している人もいます。

 

しかし、誰も見つけたことのない新しい理論を打ち立てられるのは、理学部の人たちです。あなたがそういうことをしたいのであれば、工学部では実現できません。

 

これは私ではなく、理学部の友人の言葉なのですが、「理学部は“夢追い人”の学部」なのです。

 

無難にサラリーマンとして生きてこうと思うのであれば、工学部の方が絶対に有利です。理学部は、その“夢”を追う対価として、就職難易度・入試難易度が上がるのです。

 

アーティストとしての大成を志して高校卒業と同時に一人上京する、などと比べればまだ理学部進学は「夢が叶わなかったときのリカバリー」は利きます。そういう意味では、理学部は“ゆるやかな夢追い人”なのです。

 

 

「どっちかで迷っているくらいなら、工学部にしておけ。理学部へ行くのは、行く明確な理由を持っている人だけだ。」

 

 

理学部と工学部で迷っている時点で、工学部へ行くべきなのです。真に理学部に向いている人は、理学部でないといけない明確な理由があり、そもそもここに迷いがない人たちだからです。

 

6. それでも理学部へ行きたい

 

と、まあ、さも理学部へ行くことがとてもリスキーな選択かのような言い方をしましたが、実際のところ“就職”という問題さえクリアできる人なら、理学部でも全然問題ありません。

 

「どうすれば希望の企業に就職できるのか?」まで踏みこんでしまうと、趣旨が変わってきてしまうので割愛しますが、あなたがちゃんと就活に向けて準備をしていれば、理学部でも苦労はしません。

 

そもそも、文系学部であれば、自分の学部と全然関係ない分野に就職する人がほとんどです。なので、そこと比べて、特段理学部は不利な理由はありません。

 

就活は早ければ早いほど有利です。1年生のときからもできることがいくらでもあります。だいたいどの大学にも「就職支援」のための組織(サークルとか、大学の就職支援課とか)があると思いますので、そこにまずは顔を出してみましょう。

 

しかし、理学部の人の傾向として「3度の飯より学問が好き」なため、社会的な活動に積極的な人が少ないです。

 

ぶっちゃけて言えば、コミュ障が多いんですよ笑。人の目を見て話せない人とか、普段無口なのに得意な話題になると急に早口になる人とか…

 

もちろん、コミュ障の数なら工学部もさほど変わりません。しかし、工学部は大学で学んだこと企業での仕事に直結するので、就職はなんとかなるのです。

 

ある意味、工学部は多少コミュ障でも許されるのです。理学部の人が就職で苦労するのは、実はこっちの理由の方が大きいのでは…?とさえ思います。

 

もし、理学部へ行くのであれば、いざとなれば文系学部のコミュ力強者と戦えるくらいの社会性を身につける努力をしておくべきでしょう。

 

また、「大学院進学時に工学部へ転専攻する」という裏技もあります。実際私の大学でも、物理学科から機械学科へ来た同級生がいました(大学院の過去問とか渡しました)。理学部進学者は、覚えておくといいでしょう。

 

7.まとめ

 

まとめと言う名の蛇足です。

 

私は工学部の機械学科に行き、そこには何ら後悔はありません。

 

しかし、日本の社会で理学部出身者が評価されないこと自体が、私は残念でなりません。というより、研究者というものが日本では評価されにくく、また、一度アカデミックキャリア志し、途中で道を外れた人へのモックアップも少ないです。

 

私にとって工学部の勉強はとても楽しいモノではありましたし、そのままサラリーマンになれてよかったと思っています。

 

しかし、理学部には夢があります。ロマンがあります。理学部の追う夢への憧れが、全くなかったわけではありません。

 

もっと皆が気軽に理学部へ進学できるような、そんな社会になってほしいなと、思います。

 

この記事が、悩める理系高校生に道標を示すものになれているなら幸いです。

 

 

おわり。